日本医療ガス学会設立趣意書
医学の発展に伴い医療ガスは近年、その重要性を増してきております。医療ガスは現在、酸素、窒素、二酸化炭素、笑気、アネソキシン、エチレンオキサイドなどが使用され、日々の臨床で重要な役割を果たしていることは周知の事実です。
また最近では、新ガス性医薬品として一酸化窒素、キセノン、ヘリウム、安定同位体元素などが脚光を浴びているほか、肺機能検査や血液ガス分析検査など各種検査用標準ガス、人工空気、超伝導MRI装置用液体ヘリウム、冷却用液体窒素などの利用機会も増え、医療ガスはますます多様化し、21世紀に向けて豊かな可能性を見せ始めております。
しかしながら、医療ガス自体の臨床使用に際しては、比較的安全性の確立したものから、試験的使用にとどまっているものまであり、個々の医療ガスについて今後の継続的かつ十分な検討が必要であると思われます。医療ガスに関連した事故の防止と、医薬品としての安全性向上のためには、たゆみない努力が求められていると言えます。また、医療ガスの設備や機器に関しても、安全性確保のためには臨床現場における教育や啓蒙が必要と考えられますし、保守・整備・点検の問題など、幅広く将来を見据えた討議を行うことは焦眉の問題になっていると思われます。
かかる状況下に、本邦においては現在まで、医療ガスを主体にした議論の場がありませんでした。ここに医療ガスに関心をもつ研究者、臨床家、臨床工学技士、医療関係者等が集い、広く意見交換を行い、医療ガスに関する医学の発展を図ろうとすることは大変意義深く、時代の要請にも応えるものと思われます。
ご承知の如く、国際医療ガス学会がすでに活動を始めており、各地域の支部設立が目論まれておりますが、本邦においても同学会と連携すべく学会設立の機運が高まり、この度、関係各位の要望と援助のもと日本医療ガス学会を設立する運びとなりました。
このように本学会は、医療ガスおよび関連領域に関する研究、教育や討議を行い、供給技術の進歩を図り、ひいては医療ガス全般の安全性の向上に寄与することを目指しています。
皆様方に於かれましては何卒この趣旨をご理解頂き、ご援助をお願い申し上げる次第です。
平成9年4月吉日
日本医療ガス学会